2009.01.21発行WIND FROM FUTURE Vol.24
2009.01.21発行
目次
■顧客とのコミュニケーションを強化(フィトンチッドカートリッジ)
■顧客アプローチへのご提案(ハイブリッド・コントローラー)
■基礎パッキング工法にも床下換気は必要です
HISTORY OF S ~SEIHO小史~
第24回「床下換気扇の実験」ー前編ー
昭和五十二年の正月を迎えた。モータ事業部が大分に移転する計画が本決まりになり、私は転勤を覚悟しなければならなかった。いつか九州松下を辞める気でいた私は、ここらが潮時と心を決めた。私が辞めた場合の受け皿として考えられるのは、松長電機と、ほかに西邦商事があった。
西邦商事の経営者のイスに、晴れてつくとはいえ、辞めてなお九州松下の仕事をするというのは、実のところおもしろくなかった。いずれ九州松下と関係のない仕事をしようと思った。そのとき、忘れかけていた大前翁の言葉を、あざやかに思い出した。
「モータの力で縁の下の湿気は何とかならんのかね」
そうだ、これだ。これがうまくいけば、下請けの仕事はしなくて済むかも知れん。
正月休みが明けると、すぐ松長電機の技術者(養成中)に床下換気扇の試作品を造らせた。
二月に試作品ができた。「湿気が多くて困る」としょっちゅう妻が嘆いている諫早市のわが家は借家で、押し入れの中にも湿気が充満していた。
私は何の予告もなく、夜、客を連れて帰ることがよくあった。そのときは、決まって、妻が、「早く連絡してくれていたら、布団を干したのに」と、耳打ちした。そんな高湿の家であった。
ムカデなどもよく出てきていた。浴槽に浮いて娘が大騒ぎすることもあった。
さて、試作品を床下に設置した。玄関側から床下に風を入れて、中の空気を押しだそうと、換気扇の向きを内側に向けた。家の裏側に、線香の束を持たせて、社員を配置した。トランシーバーで「スイッチ・オン」を合図し、裏で線香の煙りの流れを観察した。煙りは真っすぐ上がるだけで、ちっとも外へなびかなかった。床下の所どこ
ろにブロックの仕切りがあり、うまく空気が流れなかった。
「押してだめなら、引いてみろ」
今度は換気扇向きを内側から、外に向けた。ファンを回すと、表側の線香の煙りが床下に、勢い良く吸い込まれていった。